スペース・スウィーパーズを見ました。
原題は『승리호』 意味は勝利号。
Netflixの韓国製の映画です。
スタッフ
製作総指揮:ユ・ジョンフン
企画・製作:キム・スジン、ユン・インボム
原作・監督:チョ・ソンヒ(朝鮮語版)
脚本:チョ・ソンヒ、モカン(ユン・スンミン、ユガン・ソエ)
統括プロデューサー:チョ・ノンヨン(P.G.K)
プロデューサー:ハン・サンヒョン
ラインプロデューサー:キル・ジョンファン
撮影:ピョン・ボンソン(C.G.K)
照明:ソン・ヒョンソク(リアルライティング)
美術:チャン・グンヨン
コンセプトアート:アン・ホンイル
小道具:ユ・チョン、パク・ジュニョン(ドリームアートセンター)
セット:ART-SERVICE
録音:イ・ジョンホ(K.P.A)
衣裳:クァク・ジョンエ(コムコム)
ヘアメイク:キム・ドヒ
武術:パク・ヨンシク(BEST Stunt team)
特殊効果:パク・テフン(DND-LINE)
特殊小道具:チュ・ヨンウ(A-SQUARE)、パク・チョルヨン(DRAGON)
ボディアート:アイラク・キム(Tatoo Korea)
編集:ナム・ナヨン、ハ・ミラ(MORI)
サウンド:チェ・テヨン(DEXTER LIVETONE)
音楽:キム・テソン(MONOPOLE)
デジタル色補正:パク・ジニョン(DEXTER THE EYE)
ビジュアル・エフェクツ・スーパーバイザー:チョン・ソンジン、チョン・チョルミン
制作:映画社ピダンギル
提供・配給:メリークリスマス
キャスト
ソン・ジュンギ:キム・テホ – 勝利号の操縦士
キム・テリ:チャン船長 – 勝利号の船長
チン・ソンギュ:タイガー・パク – 勝利号の機関士
ユ・ヘジン:バブズ – 勝利号で働くロボット ※声のみ
リチャード・アーミティッジ:ジェイムス・サリヴァン - UTSのCEO
パク・イェリン:カン・コンニム(ドロシー)
キム・ムヨル:カン・ヒョヌ – UTSの科学者でコンニムの父
オ・ユンス:スニの母
ケビン・ドックリー:ピエール
『スペース・スウィーパーズ(승리호)』 概要
シリアスな顔で死体を確認する男がいました。男は死体を確認し、残念そうに死体を棚に戻しました。
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その男の名はテホ。宇宙の掃除屋です。

宇宙に戻ると仕事が待っています。彼らの仕事は、軌道上に散らばる宇宙ゴミ(デブリ)を集めること。
宇宙の清掃人です。仲間たちが追いかけていたデカイ獲物(デカめのゴミ)をぶんどって独り占めして換金しますが、はした金しかもらえない。そればかりかゴミ回収時に破壊したアンテナの弁償金、その他ツケの利息などを含めて、結局借金が増えるばかり。
彼らとは、チャン船長、バブズ、タイガー・パク、そしてテホ。
登場人物
チャン船長(キム・テリ)

勝利号の船長。
タイガー・パク(チン・ソンギュ)

勝利号の機関士。短気な武闘派だが情にもろい。
キム・テホ(ソン・ジュンギ)

勝利号の操縦士。ある捜し物のために掃除屋をしている。
バブズ(ユ・ヘジン ※声のみ)

勝利号で働いているロボット。船外活動や交戦時に特殊な銛を使って活躍。EMP爆弾によって機能停止するため完全なロボットと思われる。
仲間の宇宙船にはブラジル国旗が掲げられてたり、ロシア人がいたりカウボーイハットを被った人もいるし、ポルトガル系の人もいます。彼らが仕事の合間に遊んでいるのは、花札だったり。
いろんなところにバランスを取っているのが伺えます。
世界観
地球は気候変動により植物がなくなり、人類は滅亡寸前だった。
宇宙開発企業UTSはそんな地球の代わりに人類のための快適な住環境を宇宙に開発し、UTSのCEOであるジェイムス・サリヴァンはそれをエデンと呼んだ。UTSの最終目的は火星を緑化させ人類を移住させること。
だが、エデンに住めるのは限られた一部の人類のみで、ほとんどの人類は劣悪な地球に取り残され、宇宙に出た人々も、エデン住人=市民。とエデンにすまないその他=非市民とに分けられていた。
非市民の多くは就労ビザを取り、宇宙エレベーターに乗って地球から出稼ぎに出ている者たちだった。
宇宙には度重なる宇宙開発で発生した宇宙ゴミが散らばり、それらは超高速で飛び交い、ときにコロニーにぶつかり被害を出していた。
宇宙ゴミを掃除するものたちがこれからの開発にはどうしても必要だった。
『スペース・スウィーパーズ(승리호)』あらすじ
彼らはゴミの中にエアバックに包まれた女の子を発見します。それはテロ組織、ブラック・フォックスが違法改造したアンドロイドで、中には水素爆弾が入っていました。
この女の子ドロシーを欲しがっているのはテロ組織、ブラック・フォックスとスペースガードという宇宙警察。彼らはブラック・フォックスにドロシーを売って金に変えることにしました。
彼らとの取引場所はコロニー内にあるクラブのような場所。ブラック・フォックスは一人でやってきましたが、ちゃんと要求した200万ドルは用意してきていました。
取引しようと思ったら、、ドロシーがいない!

ドロシーをブラック・フォックス、勝利号のクルー、そして取引を盗聴で知っていたスペースガードの3つのグループが追いかけて衝突します。
ドロシーを攫ったのは、ブラック・フォックスかと思いきや、覆面を取ったら掃除屋の仲間たちでした。
ブラック・フォックスとはもともと環境団体で、ドロシー(コンニム)はアンドロイドではなく人間の女の子で、博士の子どもだったのです。
コンニムは、不治の病にかかっており、手を尽くしましたが完治せず。最後の手段でナノボットを体内に入れてみたところ、彼女の身体と適応しさらにナノボットを自由に操れる能力が備わったのです。
コンニムの能力で地球上の植物も復活させることができる。まさに人類の希望なのでした。

それを潰したいサリヴァンらはドロシーとその中に共存するナノボットを完全消滅させるために、ドロシーをファクトリーのコアの中でファクトリーもろとも爆破し、葬り去る計画でした。
なぜならナノボットは2億度以上の温度でないと死なないからです。
奪われたドロシーを奪還するために、勝利号クルーらはファクトリーを目指します。ファクトリーコアで無事にドロシーを取り戻しますが、コアの爆弾を止めることはできないことが分かります。
コアで爆弾が爆発するとどうなるか。
ファクトリーは落下し、地球は隕石落下と同等の被害(超巨大津波と気候変動)により、地球に住む人類はすべて死ぬ。
コンニムはナノボットと共存しているので、爆弾によりナノボットが消滅するとコンニムの病が再発しやがて死に至る。

最悪の状況でした。彼らはコンニムを選びました。5000キロ以上爆心地から離れればナノボットに影響が及ばないので、全力でドロシーを連れてファクトリーからの脱出を試みます。
通話回線がつながったままだったので、これらの会話はファクトリー内に丸聞こえ。それを利用し、チャン船長は同士を募りました。
集まった掃除屋仲間たちはスペースガードの追手と交戦し、彼らを宇宙の彼方へと逃がすのでした。
追手が来ないと安堵したのもつかの間、
「サプラ~イズ」
サリヴァンが単独で追いかけてきていたのでした。最終決戦が始まります。
決着のつかぬまま勝利号はそのまま爆心地から逃げつつけ、ついに5000キロ離れた場所、ドロシー(コンニム)安全圏内まで到達しますが、サリヴァンのくも型兵器によってすでに船はボロボロ。船内の残り空気もあと僅か。クルーらは死を覚悟します。
ここで衝撃の事実が明かされます。
実はドロシーは呼びかけに応じ参戦したボーイに託されており、彼らが運んでいたのは水素爆弾だったのです。
勝利号は水素爆弾により宇宙の塵になりました。サリヴァンを道連れに。

・・・・・・・・・
・・・・・
・・
悲しみに包まれる中、赤い彗星が光ります。
コンニムのナノボットを自由に操る能力により、勝利号はナノボットに包まれて爆発の被害が及ばないさらにはるか彼方へと船だけ超速で運ばれていたのでした。(たぶんそういうことだと思います)

サリヴァンは去り、コンニムは彼らの娘になりました。その後の後日談が少しだけ。コンニムは地球に降りて植物を復活させる活動を継続中。バブズは念願の人工皮膚が手に入り、女になりました。今度は声を変えるべくカタログを物色中。今は教養を身につけるべく奮闘中。タイガー・パクはコンニムの友達が怖がるので入れ墨を全部抜きました。テホは新しい靴を10足買いました。
おしまい。
気になったところ。感想など
ここからは感想と気になったところなどを書いてみます。
エデンはまるでフラットアース
エデンの構造はまるで地球平面説を唱える人々が提唱する地球の姿、そのものです。これは意図的にやっているとしか思えないです。CEOはスペースコロニーをエデンと呼んでいるあたりも明らかです。

フラットアース(地球平面説)とは、キリスト教の教義をもとに地球とは本当は平面であるとする説のことです。今でも根強い支持があり、信者は近年増加傾向という報道もあります。
ここからは勝手な推測ですが、キリスト教原理主義者たちへの若干の揶揄が入っているのかな?という気がしました。テロ組織、ブラック・フォックスが出てきたときの紹介がもろISISだったりなどの部分と絡めると、実はいろいろアイロニーが入っているのかもしれません。
ナノボットってなに?最強?
この映画の設定でもっとも重要なキーワードはナノボットでしょう。ナノサイズのメカのようですが、2億度の温度でないと死なない、あらゆる場所で有機的に作用して、有機物を再生したり、無機物を修復したり、集合して物質化もできるし、散って姿を消すことも可能。集合しないときはナノサイズなので捕まえることは不可能に近いです。
異常な生命力。有機物なのか無機物なのかはっきりしない挙動。これを創造した科学者が実際に制御できているのか怪しい。
などなど、意味不明なんです。最強すぎます。ナノボットというからにはナノマシン的な未来のナノテクノロジーなのでしょうが、どうも汎用性と生命力が桁違いです。
元ネタには『プラネテス』?
幸村誠の漫画で『プラネテス』というものがあります。
これはスペースデブリを回収する宇宙の掃除屋を描いたSF漫画です。
プラネテスに酷似してる!!ということはありませんでしたが、エッセンスは非常に似ていますね。
「宇宙ゴミを拾う理由がある」という点でキム・テホに似ているユーリというロシア人宇宙飛行士が登場します。
キム・テホもユーリも、探しているものは大事な人の遺体である
という点もよく似ています。元ネタというには弱いですが、影響は受けているかもしれませんね。
違和感高めの宇宙空間のギミック
無重力感のない宇宙です。ビュンビュン風切り音をさせながら弾丸が通り抜けていくし、撃墜されたときも宇宙船が撃墜されたというより戦闘機が地上に落ちていく感じ。
自分よりも圧倒的に重い宇宙船をこちらにたぐりよせたり、突然停止する慣性の法則。

言い出したらきりがありませんが、そんなことはどうでもいいんです!野暮ってもんです!スペース・スウィーパーズの世界ではこれが現実なんです。それで十分。
ただ、これだけは言いたい。
地球に落ちていきながら、敵を散らし、勝利号のエンジン回復次第Uターンして宇宙に切り返すのはさすがに無理だろ!!
重力で落下しながら脱出速度まで加速するって、逆にエンジンぶっ壊れるわ!
・・・・科学に疎い俺でもさすがにいろいろ気がつくレベルでいろいろ変なリアリティなんですが、少し不自然感が気になってしまうのは物理法則がなんか変というところです。
投げた球が突然ぐにゃっと曲がったりしたら不自然ですよね?
変化球にはナックルボールのように予測不可能な動きをする球種もあるとはいえ、例えば投げた球が一瞬ピッチャーのもとへ戻って、その後チェンジアップでキャッチャーに届いたら?
人間が体感的に感じる物理法則を完全に無視しているので、違和感どころか録画されてたら、確実にネットニュースになります。
そういった、人間が体感的に感じる物理法則の違和感が割と多かったなあという印象です。
その他もろもろ
いろいろと言いたいことやもう少し深堀りできそうなところもあるので、後日またまとめたいと思います。

映画としての感想ですが、韓国として割と予算をとったSF映画ってこれがはじめてじゃないでしょうか。韓国映画の得意ジャンルであるノワール、実録犯罪サスペンス、暴力系ジャンルはたくさん見てきた記憶がありますが、SFってちょっと記憶がないです。
SF映画としてはいろいろと突っ込みいれたい部分はありますが、全体としては最後まで飽きずに観られる映画でした。シナリオも不自然なところいっぱいあるんですが、少し気になるだけで退屈には変わりませんでした。
この原因はなんだろうなーとこの記事を書きながら考えていたのですが、分かりました。
キャラクターが生きてるからだと思います。
バブズを始めとするチャン船長、タイガー・パク、キム・テホの4人のクルーのキャラクターが魅力的。訳ありクルーが力を合わせるSF映画。
これは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と非常によく似ています。参考にしてるかもね。
世界に発信したときには及第点な部分が多いにしても、日本映画界がこれを撮れるかな?と考えるともし同じものを日本で撮ったとしたら相当悲惨なことになっているのは間違いないです。
映画コンテンツって本当に日本と韓国は差が開いてしまったと感じます。ジャパニーズとしては残念でもあるんだけど、韓国映画おもろいからしょうがないよね。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』+『プラネテス』+α=『スペース・スウィーパーズ(승리호)』
サイト掲載画像はNetflixから引用させていただきました。引用元 Netflix
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