『マンチェスター・バイ・ザ・シー』心の傷を癒やさない方法。

映画

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を見ました。一度作ってしまった心の傷は、なかなか癒えない。そんなことを感じさせる映画でした。ネタバレ無しで感想を書いてみます。

マンチェスター・バイ・ザ・シー

リー・チャンドラーは短気な性格で血の気が多く一匹狼で、ボストンの住宅街で便利屋として生計を立てていた。ある冬の日、リーは兄のジョーが心臓発作で亡くなったとの電話を受けた。故郷の町「マンチェスター・バイ・ザ・シー」に帰ったリーは、自分が16歳になるジョーの息子の後見人に選出されたことを知らされる。兄を失った悲しみや自分に甥が養育できるだろうかという不安に向き合うリーだったが、彼はそれ以上に暗い過去、重い問題を抱えていた。 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』wikipediaより

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なぜこの男はこんなにも抑圧的なのか?

主人公はリー・チャンドラーというとにかく抑圧的な男。何か巨大な暴力性を隠し持っているような、そしてそれを押し殺し続けているような、陰鬱な男です。

リー・チャンドラーを演じるケイシー・アフレックは俳優や監督しても有名なベン・アフレックの弟です。もともとこの映画の主演はマット・デイモンが演じる予定でしたが、ベン・アフレックがマット・デイモンの友達だったので、そのつながりでケイシー・アフレックにバトンタッチしています。(マット・デイモンはプロデュースとして参加。)

この映画を見始めて最初の感想は「なぜこの人はこんなにも感情を抑え込んでいるのか?」

まあとにかく、自分を抑えている。爆発しそうな何かを秘めているのにもかかわらず、それがなんなのかわからない。誰も頼らず、誰も必要としない。何も望まない。何も欲しない。誰とも関わらない。誰ともつながらない。ここまで禁欲的で抑圧的な生活を送る理由は一体何なのでしょうか?

この疑問は映画の中盤で明らかになるのですが、その経験は本当に癒しがたい心の傷となっていることがわかります。こんな経験があれば、誰だってこんなにふさぎ込んだ自滅的な生活をおくるのは無理ないかもしれません。

そりゃそうなるわ。と思うには十分すぎるほどの痛ましい過去を知ることになります。

ですが、私はそれでもこの男は自分を罰しすぎているという憤りを感じずにはいられませんでした。この男の塞ぎ具合がどうにも見ていて痛々しいのです。

リー・チャンドラーは人とのコミュニケーションを一切断ってしまっている。その理由は映画の中盤に明らかになります。ここではネタバレになりますので控えますが、こんな経験があれば、誰だってふさぎ込むというような経験です。

そして、さらにリー・チャンドラーを苦しめるのが、誰も俺を罰してくれないということなのです。

ならば自分で自分を罰するしかないという意識のもと、彼は自分で自分を罰し続けている男なのです。

誰しもが、心の傷を抱えて生きている

誰もが心にはトラウマを抱えて生きているものです。それが小さいものであれ、大きいものであれ。ときには自分一人では抱えきれないほどの大きな後悔を背負うことがあります。

この男の抱える闇は誰も解決できない、そして誰にも解決してほしくない。

誰かに癒やしを与えられてしまったら、本当に誰も自分を罰してくれなくなるから。最後の砦として彼は自分で自分を罰し続けることに決めたのです。自殺をしなかったのも、そのほうが自分にとっては苦痛となる選択だからなのでしょう。

この経験から立ち直るにはどうすればいいのでしょうか。それがこの映画では一つの道として描かれます。だいたいそんなのは一つしかありません。人との関わりです。

この映画ではもう半分うつ状態と言ってもいい、生きる屍のようなリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)が彼の甥パトリック(ルーカス・ヘッジズ)と半ば強制的に暮らすことになることで、少しずつ、本当に少しずつですが、心をひらいていきます。

心の傷は簡単には癒えません。ましてやこの映画の主人公が負った傷は計り知れません。誰かに罰してほしいのに、誰も罰してくれない。

ネタバレとなる核心部分なのでぼかしますが、本当は誰もが彼を罰したい、そんな経験なのです。でも誰もが罪はないとも言う。誰も許してくれないけど、誰からも罰されることがない。こんなアンビバレントな状況では、抑圧されていくのも無理はありません。

マンチェスター・バイ・ザ・シーには帰りたくない。という彼の主張は本当にまっとうな、当たり前のものだと感じざるを得ないのです。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』このタイトルが、深い。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』港町の名前だけど

マンチェスター・バイ・ザ・シーという場所があるので、それがそのまんま映画のタイトルなのですが、この映画の核心となるある事実に触れたあとに、ぜひ、このタイトルに戻ってきてください。

マンチェスター・バイ・ザ・シー

マンチェスター・バイ・ザ・シー (Manchester-by-the-Sea)は、アメリカ合衆国のマサチューセッツ州のエセックス郡ケープアンに位置する町。景色のいい浜辺(シンギング・ビーチ (Singing Beach)) や景勝地で知られている。2010年のアメリカ合衆国国勢調査によると人口は5,136人。

タイトルに大きな意味が含まれていることがわかるかと思います。

この映画の核心に触れたときに、思い出すことは、バイ・ザ・シーという言葉なのです。主人公、リー・チャンドラーが、抑圧されていた感情をどうしても抑えきれないシーンがひとつだけあります。それが、この映画のタイトルにつながるシーンなのです。

彼の衝動がじんわりと胸を包むシーンです。わかる!わかるよ!その気持ち!と近くに行って肩をゆすりたくなるような、そんな共感を主人公に感じざるを得ないシーンです。必見です。バイ・ザ・シーであることを呪いたくなる彼に共感必至です。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』おすすめです

なんというか、日本映画っぽいハリウッド映画なんですよね。日本人が撮りましたと言っても誰も疑わないような、そんな静謐で、どこか画面いっぱいに緊張感が漂う作品です。小津安二郎映画ってのほほんとしてるようでなんか緊張感ありますよね。そんな感じの映画です。

一見すると動きの少ない映像ですが、どのシーンも素晴らしいので集中して見ることをおすすめします。

暇な時にだらっとみるのではなく、一気に見てほしい映画です。何気ないシーンでもなにか心に迫るのです。そういったシーンはダラっと見ていたのでは見逃してしまいます。ぜひスマホの画面を閉じて映画に集中できる環境で。

リー・チャンドラーの心の苦しみを追体験できるはずです。おすすめです。

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