『イントゥ・ザ・ストーム』を見ました。ディザスタームービーの傑作といっていいほどの出来でした。災害現場に居合わせたような臨場感。以下感想書いてみます。
『イントゥ・ザ・ストーム』
アメリカ合衆国の片田舎に位置する小さな町シルバートン。その日、高校の卒業式を迎えた教頭のゲイリーは、竜巻の注意報を受けたことで式の延期を校長に訴えるが、その提案は却下され、予定通り式は執り行われることになった。だが、これまでに無い大規模な竜巻が学校を襲い、式の参加者はパニックに陥る。何とか生き延びたゲイリーは、長男のドニーが町外れの廃工場にいることを知り、次男のトレイと共に助けに向かうのだった。wikipediaより引用
ディザスタームービーとしての成功
とにかくこれに尽きると思います。ディザスタームービーとして極限まで絞った脚本と何より竜巻の恐怖を完璧なまでに観客に追体験させることに成功している。これです。
もうディザスターものなんて、これがあれば他に何も要らないといってもいいんじゃないでしょうか。
とにかく、竜巻怖ぇぇ!!!となる映画です。
それで十分だと思います。脚本もかなりしっかり作り込まれて、ストーリーという面からも飽きることがない工夫が凝らされた映画ですが、もう何度も言いますが、とにかく竜巻が怖い。これでもかと襲い来る自然の驚異に為す術なく逃げ惑う人間たちという構図でこの映画は十分すぎるほど成功しているのです。
人間は自然の猛威には逆らうことはできない。ということをまざまざと見せつけられ、追い打ちのあとにさらなる追い打ちをっけるように自然災害の恐怖を頭に叩き込まれるがごとく、何度も何度も襲い来る竜巻に「うわぁぁぁ怖いぃぃぃ!!」って思いながらそれでも食い入るように画面に見入ってしまう。
これはもうディザスターものとして大成功している証だと思います。
映画始まってからしばらくは、町の住民ののどかな生活ぶりと、それとは対象的に竜巻を追う竜巻ハンターの面々の様子がじっくりと描かれます。いわゆる嵐の前の静けさをしっかりと描いています。このある程度しっかりと尺をとった前振りがあるので、後半の恐ろしい。
ただただ恐ろしい竜巻に翻弄される人々に感情移入できるし、のほほんとした場面からのギャップから日常とはかけ離れた恐怖場面なんだと観客に自然に伝えることに成功してます。
25年後の自分なんて分かるわけない。
手撮りカメラの映像がブレすぎないのも高評価
この映画の特徴としてモキュメンタリー風味の自撮り映像、手撮り映像の多用があります。竜巻ハンターの手撮りカメラの映像を交えたり、登場人物が自ら撮っているカメラ画面の挿入といった手法で臨場感を煽ってきます。
よくあるモキュメンタリーものの失敗として実際の手持ちカメラ感を出そうとしすぎて画面を上下に揺らしまくったりとか、手持ちカメラの映像っぽく画面をブレさせるのを多用しすぎて、ただ単に見にくい映像になってしまっているというものがあるのですが、この作品ではそこはきっちりと画面を揺らすことなく撮っていて、ちゃんと画面の中=映画の中に集中できて、そこもよかった点です。
25年後の自分よりも、今を生きろ
この映画のストーリーの中に高校生の主人公が25年後の自分に対してビデオレターを撮るというがあります。25年後の自分に向けてビデオレターを撮るシーンを、災害の起きる前と起きたあとで繰り返すことで、災害を生き抜いたものにはなんらかの心境の変化があるというのを、ビデオレターの映像というフィルターをとして観客に訴えかけてきます。
それがくどくなく割とあっさりとしていて、ちょうどええ。そこも良い点でした。
災害を生き抜いたものが人生観が変わるなんて、そんなの当たり前のことで、変わらないやつなんていないといっていいと思います。それに、災害が人間に与える感情的な側面に力を入れるような映画ではないはずなので、さらっと流してストーリーの中に自然に溶け込ませる程度になっている演出の加減が実にちょうどよいと感じました。
「今を生きる」というメッセージはさらっと流す程度で十分。ほとんどCGとはいえ、これだけ映像的説得力を与えられた映画で余計な言葉はいらないですよ。
ああ、竜巻って怖いな。と心底体感できるということがこの映画における成功であり、私は見終わったときにぐったりとしながら「なんて竜巻は恐ろしいんだ」とまざまざと体感させられたので、これだけで十分だと言っていいと思うのです。
それに25年後というあまりにも遠い自分に語りかけるなんて、タイムカプセルにしても遠すぎませんかね。せめて10年後とかでいいんじゃないかと。
余計な感想はいらない。体感させられたという経験があれば十分。
繰り返しになりますが、とにかく自然災害の恐ろしさを圧倒的臨場感のある映像で追体験でき、竜巻は怖いんだ。ということをしっかりと教育させられるような出来の映画です。
これは災害映画としての成功であり、「ああ面白かった、竜巻って本当に怖いんだな。」というシンプルな感想で終わっていい映画だと思います。
この映画に25年後の自分に対してのメッセージは云々とか、最後のYouTuberはなんで生きてるんだとか、ピートはなんで死ななければいけなかったんだとかそういった感想は野暮だと思います。災害では、誰が生き残って誰が死ぬかなんてわからないのですからそんなこと語るだけ無駄です。映画の中ですが、起きていたのはまぎれもない災害です。
災害、天災にはただ人間は無力だと思い知れるいい映画でした。
コメント